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東京大学薬学部との研究でわかった、お菓子は雑貨よりも約2倍記憶に残るという新事実

商品やサービスの販売促進や認知度の向上のために配布されるノベルティグッズ。文房具や日用品など、さまざまな雑貨にブランドや企業のロゴを印刷したノベルティは多く見られますが、「おかしプリント」は、味覚でも訴求でき広く認知のあるお菓子という媒体を使っている点がユニークです。

そこで私たちは、広く認知のあるブランドを使用したオリジナルのお菓子ノベルティが一般的なオリジナルの雑貨ノベルティと比べどのような違いがあるか、東京大学大学院 薬学系研究科と共同研究を行いました。その結果、オリジナルのお菓子ノベルティは、印象、学習、対話を促進することがわかりました。今回の研究を指揮した、池谷裕二教授に、研究内容やその狙い、そして結果について、おかしプリント事業責任者である渡辺啓太がお聞きしました。

池谷 裕二 教授東京大学大学院薬学系研究科 薬学専攻医療薬学講座 教授

池谷 裕二 (いけがや ゆうじ)

神経科学および薬理学を専門とし、海馬や大脳皮質を研究。研究テーマは薬理学、神経回路網、ニューロン・シナプス・神経回路、薬物脳科学、脳イメージング、光脳科学など。

渡辺啓太

森永製菓株式会社 新領域創造事業部 おかしプリント事業責任者
渡辺啓太(わたなべ けいた)

営業時代やアンテナショップ事業で経験した「通常のシーンを変えた少量で作れるオリジナルデザインのお菓子の可能性」を感じ「おかしプリント」を着想。社内新規事業として立ち上げ、成長させてきた。

研究方法:ノベルティグッズとしてオリジナルのお菓子とオリジナルの雑貨を用意し、国名を覚えるタスクを検証

今回行なった研究の概要は以下のとおりです。

ノベルティグッズ

  • オリジナルのお菓子:プリングルズ、ハイチュウ、ダース、小枝、ラムネの5種類を用意
  • オリジナルの雑貨:ボールペン、クリアファイル、うちわ、ウェットティッシュ、トートバッグの5種類を用意
  • ノベルティに用いる社名を10社用意し、それぞれ 5 社ずつの2群(AとB)に分類
  • お菓子および雑貨でそれぞれのノベルティグッズを作成し、以下の4セットを用意
    1. オリジナルのお菓子A×オリジナルでない雑貨
    2. オリジナルのお菓子B×オリジナルでない雑貨
    3. オリジナルでないお菓子×オリジナルの雑貨A
    4. オリジナルでないお菓子×オリジナルの雑貨B

タスク

国連加盟国 193か国のうち、3-9 文字のカタカナのみで表記される国名を無作為に抽出 し、1 セット 20か国として2セット作成

試験

成人16人を被験者とするクロスオーバー試験で実施。被験者らは2人1組で向かい合って着席し、会話を交えつつ7分間で国名 20か国を暗記した。13分のインターバルを挟んだのち、同様に2つ目の国名セット20か国の暗記を7分間で行った。この間、被験者ペアの会話も録音し、会話時間を解析した。

試験

その後、53 分 の休憩をはさみ10分間で試験を行った。暗記した国名120か国から選ぶテストに加え、グッズに記載されていた社名10社を30社の選択肢から回答するというもの。被験者は国名テストで40か国、社名テストでは10社選ぶように指示された。被験者らは個別に着席して会話をせずに取り組んだ。

結果

検証内容 オリジナルのお菓子 オリジナルの雑貨
社名記憶テスト正答率 63.8% 31.3%
国名テスト正答率 75.8% 69.6%
音声データ解析による会話量

(実験の最後の2分間)

5.52sec/min 3.09 sec/min

研究結果

考察

オリジナルのお菓子ノベルティは従来から用いられているオリジナルの雑貨ノベルティよりも効果的な宣伝効果を持つことを示唆している。同時にオリジナルのお菓子を貰った人は、オリジナルのお菓子が快楽を刺激し、直接関係のないその周りの記憶も促進される。

また、コミュニケーション量が「オリジナルのお菓子」群で増加したことによってタスクに関する会話量も増加し、更には良く知られているブランドのお菓子のオリジナルだったことがより効果的に記憶に定着した可能性がある。

お菓子が与える快感と、オリジナルプリントの珍しさが記憶に作用 

渡辺:今回の共同研究では、有名ブランドのオリジナルお菓子作成サービス「おかしプリント」にとってよい効果が見られたのではないかと思っています。率直な感想をお聞かせください。

池谷教授:予想外だったのは、想像を超えて『オリジナルのお菓子』の効果が強かったことです。クロスオーバーデザインの試験は、本当の効果を観察できる実験方法ですので、今回のように、はっきりとした結果が出たポイントは大きいですね。

池谷教授

渡辺:ノベルティに記された企業名を答える社名テストでは、オリジナルの菓子の正答率が63.8%、一方オリジナルの雑貨は31.3%と、2倍近い差がつきました。

池谷教授:お菓子が持つ食感や甘味、食べるという行為は五感を刺激し、〝快感〟を引き起こすものです。しかしボールペンやクリアファイルにはそれがないため、快楽は生じません。また、お菓子のノベルティの目新しさも要因の一つです。ボールペンやクリアファイルに社名があるノベルティグッズは見慣れているものの、お菓子のパッケージに社名があるのは珍しさがあります。ですから、『あれ?このお菓子がこんなパッケージになっている』というのはより気づきやすいです。

渡辺:自分の知っているブランドのお菓子であることと、オリジナルのパッケージであることが記憶に作用したのですね。

池谷教授:カエルは止まっているものは見えなくて、動いているものしか見えません。つまり背景というありふれた刺激のなかで、それとは異なるものを見つけ出すために、差分検出をしているのです。だから、ハエに似せた物体と糸につけて目の前で動かすだけで、まちがえて『ハエだ!』と食べようとします。動いたものが大きかったら『敵だ!』と勘違いして逃げます。このように「いままでと違う」ことに敏感であることは哺乳類でも同じです。ですから、よく見かけるノベルティにある社名には心が動かされず、無視されてしまうのです。また、同じお菓子でも特別なプリントがない市販のハイチュウならインパクトが小さいです。よく知っているお菓子だけど、特別なプリントがされていることが、大きなインパクトを生むのです。

市販のお菓子より「オリジナルのお菓子」のほうが楽しさを促進

渡辺:国名の記憶テストでは、オリジナルのお菓子提示状態の正答率は 75.8%、オリジナルの雑貨の場合は69.6%とわずかに差が生じました。雑貨のみ提示状態であっても、被験者に市販のお菓子の提供がされていましたが、この結果を見てどう感じましたか?

テスト風景

池谷教授:オリジナルのお菓子ノベルティの、いつもと違うお菓子を食べながら暗記をしたほうが、ありふれたお菓子を食べたときよりもよい成績となりました。記憶は快楽によって促進されると言われています。好きな人といっしょに過ごしたことはよく覚えていて、学校の授業でも先生の面白いエピソードがあるとその前後のことは覚えている……ということがあります。つまり、同じお菓子でも『オリジナルのお菓子』のほうが快楽を引き起こしやすいことを示唆しています。

渡辺:たとえば、展示会などのビジネスシーンにおいて、おかしプリントで作ったハイチュウのノベルティを配ると、その会場でプレゼンされていた商品やサービス、担当者の印象などを覚えてもらえる可能性が高まると捉えていいのでしょうか?

池谷教授:それについてはきちんと測定しないとわかりませんが、親密性や会社への好感度が高まる可能性はあるかもしれません。

市販のお菓子より「おかしプリント」のほうが楽しさを促進

渡辺:被験者がペアになって会話しながら記憶するタスクでは、音声データによってその会話量も測定されました。その結果、オリジナルのお菓子を提示したペアのほうが会話の量が多いという結果となりました。

 

池谷教授

池谷教授:記憶する試験と言っているので、最初は会話をしていても、後半は沈黙していくのですが、『オリジナルのお菓子』のときは会話がとぎれず、最後の2分間になってもなお会話が続く傾向にありました。会話に花が咲く、話題提供のきっかけになると推測しています。

渡辺:森永製菓として「オリジナルのお菓子が商談成功につながるツールである」とアピールしてもいいのでしょうか?

池谷教授:やはりこれについても現時点では実験を行っておりませんので、より詳しい検証が必要になります。ただし、話がはずむか弾まないかなど、対人関係はその場の雰囲気に影響すると思います。

渡辺:商談成功につながることを信じて提案していきます。

ビジネスでの絆を深めるために「おかしプリント」が役立つ

渡辺:お菓子はコミュニケーションに役立つと考えているのですが、池谷教授はどうお考えでしょうか?

池谷教授:昔から近所の人が縁側でもいらっしゃるとなったら必ずお茶請けを出しますよね。それをいただきながら井戸端会議してっていうのが多分昔から大切にしていることで、お菓子が重要な存在というのは歴史が語っています。科学的に見ると、グルコース、ブドウ糖は吸収が早いのですぐに血糖値を上げてくれて脳の覚醒につなげられるという側面もあります。キャンディーなど糖分の多いものは生物学的な利点もあります。

渡辺:疲れずに対話に集中する際にも有効なのかもしれませんね。

池谷教授と渡辺啓太

渡辺:おかしプリントは、展示会や営業、そして社内イベントなど、ビジネスコミュニケーションに活用いただけるツールとして提供しています。ビジネスの場面でお菓子はどのような作用があるとお考えですか?

池谷教授:大阪だと『飴ちゃんあげる』みたいな文化がありますよね。お菓子は絆を深めるツールであると考えています。縁側での井戸端会議など、お菓子を介したコミュニケーションが失われつつあります。

渡辺:昔ながらのコミュニケーションは大切にしたいですね。仕事の上での絆を深めるきっかけとしておかしプリントが積極的に使われることを願っています。

取材後記

おかしプリント事業を展開したくさんの事例を見てきて、常日頃から思っていたことがありました。

我々が提供している有名ブランドのオリジナルのお菓子は本当にお客様のお役に立てているのだろうかと。

我々の役割としては、お客様に配って頂くことがゴールでなく、配ったその先にある「ワクワク感」から「記憶に残り」「アクションが生まれる」といった【配ったその先にある顧客体験】を一緒に生み出していくことで、お客様のお役に立ちたいと考えています。

ノベルティグッズはえてして使って貰えるから、という理由でなんとなくボールペンや、なんとなくカレンダーを、タオルを選択されてしまっているのではないかと、本当にノベルティを作ってくださった会社様の企業名やサービス・商品が貰った方の記憶に残りアクションにつなげられているのか? と疑問を持ちました。

そんな疑問の元、今回池谷教授に共同研究をお願いしました。研究は、実際のビジネスの現場でノベルティを配る状況を想定していましたが、さりげなく置いておいて、より相手の意識に作用するかといった、おかしプリントのユニークな特性を測るものとなりました。結果を見て、私たちの仮説を証明できたと思います。

私自身も、ビジネスコミュニケーションにおかしプリントを役立てています。営業活動や展示会、来店促進、社内コミュニケーションなど、企業の皆様が抱えるさまざまな課題を解決できるよう、多くの活用事例をご案内して参ります。